はじめに
Mattermost v11がメジャーリリースとして正式に公開されました。(最新版:v11.0.5、2025年11月17日リリース)
今回のアップデートは、データベースの統一化、ワークフロー機能の強化など、大幅な改善が含まれた重要なバージョンアップです。
本記事では、v11の主要な変更点と新機能について、運用への影響を踏まえて詳しく解説します。
重要: 本記事はすべての変更内容を網羅していません。完全な詳細は公式リリースノートをご確認ください。
主要なアップデート内容
1. MySQL サポートの正式終了
v11では、MySQLのサポートが正式に終了し、PostgreSQLのみがサポートされるようになりました。
そのため、v11にアップグレードする場合は事前にPostgreSQLへのデータ移行手順を確認し、十分なテスト環境での検証を行ってから実施する必要があります。
なお、PostgreSQLでもv13のサポートが終了し、最小要件がv14以上となっています。
2. 事前パッケージ化プラグインの更新
v11では、プラグイン関連にも更新が入っております。主な内容は以下の通りです。
特に注目するポイントとして、Playbooks v1が事前パッケージから削除されたことです。
後述しますが、これによりTeam EditionでPlaybooks機能が利用できなくなりました。
v11で更新されたプラグイン:
- Agents プラグイン v1.3.1 – AI エージェント機能の事前パッケージ化
- Boards プラグイン v9.1.6 – プロジェクト管理機能
- MS Teams プラグイン v2.2.2 – Microsoft Teams連携
- Playbooks プラグイン v2.4.2 – Professional ライセンスでPlaybooks v2が利用可能
削除されたプラグイン:
- Playbooks v1 – 事前パッケージから削除(v2に統一)
3. Playbooks機能の大幅変更
Team Edition での利用停止
v11では、Team EditionでPlaybooks機能が利用できなくなりました。
Entry、Professional、Enterprise、Enterprise Advancedプランでは自動的にPlaybooks v2にアップグレードされます。
Professional ライセンスでのPlaybooks v2対応
Professional ライセンスユーザーもPlaybooks v2の高度なワークフロー機能を利用できるようになりました。
4. 新しい無料エディション「Mattermost Entry」の導入
Mattermost Entry(使用量制限付き無料版)
従来のTeam Editionに加えて、新しい無料エディション「Mattermost Entry」が導入されました。
使用量制限がありますが、基本的なコラボレーション機能を無料で利用できます。
Team Edition のユーザー制限変更
また、従来のTeam Edition(MIT コンパイル済みライセンス)でもユーザー数の上限を 1000 → 250 に変更されました。
エディション構成の重要な変更
Team Edition(無料版):
- ユーザー制限 – 最大250ユーザー(MIT コンパイル済みライセンス)
- 利用不可機能 – Playbooks v2、Enterprise専用プラグイン
Mattermost Entry(新無料版):
新しく導入された無料エディション
- ユーザー制限 – 最大50ユーザー(推奨)
- 機能 – 有償版で提供される機能を使用量制限付きで提供
5. アクセス制御が柔軟に進化
カスタムプロファイル属性の管理機能強化
v11では、ユーザー属性(部署・役職・拠点など)の管理が大幅に強化されました。
これまで「表示用」だった属性が、アクセス制御の基準として利用できるようになっています。
主なアップデート:
- 管理者管理(admin-managed)属性の追加
- 属性ごとに「ユーザーが編集できるか」を設定可能。重要な情報をユーザーが勝手に変更することを防止できます。
- ABAC(属性ベースアクセス制御)との連携
- 管理者管理の属性をアクセスルールに利用でき、より柔軟な権限設計が可能になりました。
- GUIでの編集可否設定
- System Consoleに「Users can edit?」スイッチが追加され、操作性が向上しました。
v10からの違い:
以前は属性が「表示専用」でしたが、v11では「アクセス権の条件」として使えるようになりました。
例:部署 = Bali かつ 役職 = Manager のユーザーのみ特定チャンネルにアクセス可能。
チャネルレベル属性ベースアクセス制御(Enterprise Advanced)
またチャンネル単位でのアクセス制御が可能となり、チャンネル管理者自身が属性条件を設定できるようになりました。
新機能のポイント:
- 「Access Control」タブが追加(Enterprise Advanced)
- チャンネル設定画面から直接ルールを定義できるようになりました。
- 複数ポリシーの継承に対応
- 全社共通ルール+チャンネル固有ルールを組み合わせて適用することが可能です。
参考
6. Bleve 検索エンジンの正式廃止
実験的機能として提供されていたBleve検索が廃止されました。
Bleveが有効な環境では、DisableDatabaseSearchをfalseに設定するまで検索機能が動作しません。
代替手段:
- Database Search(標準)
- Elasticsearch(日本語検索の精度向上にはKuromojiとの組み合わせを推奨)
7. GitLab SSO の Team Edition からの廃止
Team EditionでGitLab SSOが廃止されました。
GitLab SSOを使用している環境は、v10.11 ESR(12ヶ月のセキュリティ更新付き)に留まるか、商用/非営利オプションを検討する必要があります。
8. mmctl コマンドの廃止・統合
以下の非推奨mmctlコマンドとフラグが削除されました。
削除されたコマンド:
channel add→channel users addを使用channel remove→channel users removeを使用channel restore→channel unarchiveを使用channel make-private→channel modify --privateを使用command delete→command archiveを使用permissions show→permissions role showを使用mmctl user email→mmctl user edit emailを使用mmctl user username→mmctl user edit usernameを使用
まとめ
Mattermost v11では、以下の3つの柱による大幅な改善が実現されています。
1. データベースの最適化
PostgreSQL統一による保守性向上とパフォーマンスの最適化
2. ワークフロー機能の大幅強化
Playbooks v2による高度な自動化とテンプレート充実
3. 統合機能の拡充
豊富なプラグインとEdition再構成による柔軟な運用
これらの改善により、組織の情報共有効率化と業務プロセスの標準化が大幅に促進されます。
一方で、無料版ユーザーにとっては制限が強化された面もあります。Team Editionではユーザー数上限が1000から250に削減され、Playbooks機能の利用が不可となったほか、GitLab SSOも廃止されました。新しく登場したMattermost Entryも50ユーザー上限となっており、中規模組織での無料利用はより困難になっています。 無料版での運用を検討されている場合は、これらの制限を踏まえた上で、必要に応じて有償ライセンスの検討も視野に入れる必要があるでしょう。
以上、Mattermost v11 の主な新機能・改善内容でした。次回のアップデートもお楽しみに!
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弊社では、Mattermost の導入から運用まで包括的にサポートするサービスを提供しております。
主なサービス内容:
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- 既存システムからの移行サポート
- プラグイン導入・カスタマイズ支援
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