こんにちは。クラウドエンジニアのmoriです。
この記事はD-make Advent Calendar 2025の12/9の記事です。
スペック駆動型のAI IDE「Kiro」を使ってみた
先日GAされたことでも話題のスペック駆動型AI IDEである「Kiro」を実際に使ってみました。
結論から言うと、インフラエンジニアの私でも感動するほどのスピードでWebアプリが作れてしまいました。
背景
とあるお客様にて、ECサイトでオプションの入力内容を集計するのに、購入リストをダウンロードして集計していました。
集計作業を楽にするために、私が作成したPowerShellスクリプトのバッチを使っていただいていました。
最近、Windows10からWindows11にPC入替をしたところ、何らかの環境依存でうまく動かなくなってしまったとのことで、相談を受けていました。
私のPCでは動くので事象の再現もできず、現場を見に行くこともなかなかできない状況でどうしたものかと思っていました。
そんな時に、ちょっと前にウェイティングが解除され、ダウンロードはしたもののいまだに使っていないKiroを思い出しました。
Kiroならスペック駆動型での開発ができる。仕様は既存ツールをWeb化するだけなので明確です。処理も難しくない。
これは簡単にできるのでは?と思い、物は試しということで実際に使ってみました。

Specモードによる仕様駆動開発を実演
こんな感じの対話形式のプロンプト入力で作成しました。

以降、細かいやり取りをテキストでご紹介しますね。白が私のプロンプトでグレーがkiro君となります。
MakeshopというECサイトを運営している。
購入リストを集計して発注などをするために、リストをダウンロードして、オプションで選択している項目などを変更しているツールを提供している。
このツールをWebで実行できるようにしたい。
(私のプロンプト)
MakeShopのECサイトの購入リスト処理ツールをWeb化するプロジェクトですね。まず、この機能のspecを作成していきましょう。
feature名として「makeshop-order-processor」を使用します。
要件ドキュメントを作成しました。
MakeShopの購入リスト処理ツールをWeb化するための7つの主要要件を定義しています:
1.ファイルアップロード – MakeShopの購入リストファイルをアップロードして検証・解析
2.データ表示 – アップロードされたデータをテーブル形式で表示・検索
3.オプション項目の変換 – 事前定義されたルールに基づいてオプション項目を変換
4.データ集計 – 商品とオプションの組み合わせごとに数量を集計
5.データダウンロード – 処理済みデータをCSVやExcel形式でダウンロード
6.ブラウザ互換性 – 主要ブラウザでの動作とクライアントサイド処理
7.設定の保存・読込 – 変換ルールの設定を保存して再利用
すべての要件はEARS形式に従い、INCOSE品質ルールを満たしています。
要件ドキュメントは問題ありませんか?よろしければ、次は設計フェーズに進みます。
(Kiro)
データの集計は不要です。変換してダウンロードでまずはよいです。
(私のプロンプト)
集計機能(Requirement 4)を削除し、要件を6つに整理しました。
更新した要件ドキュメントは問題ありませんか?よろしければ、次は設計フェーズに進みます。
(Kiro)
(心の声):いいね!既存の処理内容を入れてもらう必要があるので、既存の処理をコピペしてkiro君に対応してもらおう。
サンプルまでに今使っているツールの処理を貼り付けますね。
”’
$infile = $args[0]
$outfie = $args[1] + ‘output_’ + $args[2]
date
(Get-Content $infile) |
foreach { $_ -replace “伝達メッセージ : “,”” } |
:
(以下省略)
”’
(私のプロンプト)
ありがとうございます!現在のPowerShellツールの処理内容がよく分かりました。これは:
1.CSVファイルを読み込み
2.複数の文字列置換ルールを適用(オプション項目のラベルを削除、区切り文字を変換など)
3.ヘッダー行を変換して列を追加
4.特定のフォーマット([LOT:1,…]など)をクリーンアップ
5.処理済みファイルを出力
この処理を反映して要件ドキュメントを更新します。
現在のPowerShellツールの処理内容を反映して、Requirement 3とRequirement 6を更新しました。テキスト置換ルールの管理と適用に焦点を当てています。
更新した要件ドキュメントは問題ありませんか?よろしければ、次は設計フェーズに進みます。
(Kiro)
OKです
(私のプロンプト)
ありがとうございます!それでは設計ドキュメントを作成します。
設計ドキュメントの前半部分を作成しました。次に正確性プロパティのための事前作業を行います。
事前作業が完了しました。次に、設計ドキュメントに正確性プロパティセクションを追加します。まず、冗長性を排除するためのプロパティ反映を行います。
プロパティ反映の結果:
1.1と1.3は統合可能(ファイル検証の包括的なプロパティ)
2.1と2.2は統合可能(表示データの完全性)
3.2は3.1に含まれる(ルール適用の一部)
4.2は4.1に含まれる(形式選択の一部)
それでは設計ドキュメントを続けます。
設計ドキュメントが完成しました。
設計ドキュメントは問題ありませんか?よろしければ、次は実装計画(タスクリスト)の作成に進みます。
(Kiro)
次お願いします
(私のプロンプト)
了解しました。実装計画(タスクリスト)を作成します。
実装計画を作成しました。
現在のタスクリストでは、一部のタスク(テストなど)をオプションとしてマークしており、コア機能に集中できるようにしています。どちらを希望されますか?
(Kiro)
(私のプロンプト):「すべてのタスクを必須にする(最初から包括的)」を選択
了解しました!すべてのタスクを順番に実行していきます。まず最初のタスクから始めます。
まず、Vite + React + TypeScriptプロジェクトを初期化します。
(Kiro)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
tasks.mdに記載されたタスクを順次kiro君が実行していきます(10分程度)
途中コマンド実行の確認が何度がありました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
すべてのタスクが完了しました!
完成したアプリケーション
MakeShop Order Processorが完成しました。以下の機能が実装されています:
実装された機能
1.ファイルアップロード – CSV/Excelファイルの読み込みと検証
2.データ表示 – テーブル形式での表示、ページネーション、ソート、検索機能
3.ルール管理 – テキスト置換ルールの追加、編集、削除、並べ替え、有効化/無効化
4.データ変換 – 設定したルールに基づくデータ変換
5.ファイルダウンロード – CSV/Excel形式でのエクスポート
6.エラーハンドリング – わかりやすいエラーメッセージ表示
7.ブラウザ更新時のデータクリア – セキュリティのための自動クリア
デフォルトルール
PowerShellスクリプトで使用していた14個の変換ルールがデフォルトで設定されています。
使い方
1.ブラウザで http://localhost:5173/ にアクセス
2.MakeShopからダウンロードしたCSVまたはExcelファイルをアップロード
3.データを確認
4.必要に応じてルールをカスタマイズ
5.データを変換
6.変換結果を確認
7.ファイルをダウンロード開発サーバーは起動中です。
ブラウザでアクセスして動作を確認してください!
(Kiro)
ーーー
ほうほう。ではブラウザでアクセスしてみましょう!

うおぉぉ!Webアプリができているではないか!しかも、結構ちゃんと動くし!
正味、1時間ぐらいで実装が終わってしまいました。
この後、動作確認を何度か実施し、Shift-JISがらみに文字化けやら、フロント側の不要な表示項目の削除やらの修正の依頼を2~3回ほどやり取りしました。
そして、最後は私の得意分野のインフラ部分のセッティング。S3にアップして、CloudFrontを設定して先方に渡せる状態に。。。
本当に半日で終わりました。
ちなみに、今回の開発で消費したKiroのクレジットは 25.04 でした。

このスピードとコストでこれだけの成果物ができるとは、本当に驚きです。
所感
お気づきの方もいらっしゃるでしょうか。今回、私は一切プログラムのコードを書いていません。(処理ロジックを伝えるためにコピーしたPowerShellコードはありますが)
Kiroは「スペック駆動型」と謳われていましたが、まさにその通りでした。
プロンプトでの対話を通じて、「何を作りたいか(仕様)」を明確にすることで、実装はAIが見事に完遂してくれました。
私のようなインフラエンジニアにとって、実装の細かいコードを書くことはハードルが高いこともありますが、「どのようなロジックで動くべきか」という仕様さえしっかり持っていれば、Webアプリがこれほどのスピードで作れるというのは革命的だと感じました。
簡単なツールのWeb化とはいえ、これが数時間で、しかも高品質に完了する体験は驚きの一言です。
今回は初めてKiroを使ったため、機能を使いこなせていない部分もあるかと思います。
今後、MCP(Model Context Protocol)やGitHub連携などを活用すれば、活用の幅はさらに広がりそうです。
「非エンジニアがアプリ開発もサクッとこなす」、そんな未来がもう来ているのかもしれません。
おまけ
せっかくなので、最近、リリースされたCloudFrontの定額プランのFree(無料)プランを活用して設定して、公開しました。
WAFが自動で設定され、料金が心配になりましたが、調べてみるとWAFの利用料も無料枠に含まれているとのことでした。
小規模サイトなどはWAFは採算が取れないので諦めていましたが、無料で設定できるなら設定しない手はないですね。
KiroもCloudFrontも無料枠内で提供できて、お財布にも優しい結果となりました。
爆速で開発できて、運用コストもほぼゼロ。エンジニアにとっては、本当に夢のような時代になりましたね!
